ページ「梁と壁の言葉」ではHDRを応用しました。
ノイズ除去ソフトが高感度撮影を変えたようにHDRは露出に関する常識を変えることになるかもしれません。
HDRは
High Dynamic Rangeの略で従来の写真が記録するダイナミックレンジを遥かに越える輝度差を記録できる画像形式です。各色8bitのjpegや12bitのRAWに比べてHDRでは32bitもの広大なコントラスト差を記録できます。
(画像ということを明示するために
HDRI "High Dynamic Range Image"と書くこともあります)
HDRはフォトショップのための専用形式ではありません。
もう少し詳しく書くとHDRは32bit(浮動小数点)での画像の記録形式の総称で、LogLuvやRadiance RGBEなどいくつかのエンコード形式のヴァリアントを持っています。Photoshop CS2では標準ではRadiance形式のHDRファイルを読み書きでサポートしてLogLuv形式のHDRファイルを読むことができます。おそらくはRadianceエンコードがよく使われるHDRフォーマットであると思います。
HDRはもともとCGや映画の分野で必要から生まれたもので、それがこうやってスチル写真の分野にも応用されてきたというわけです。
重要なポイントはHDRは広大なダイナミックレンジを記録できますが、それを撮るカメラやそれを再現するモニターやプリンタは従来と変わらないということです。
そのためHDRを作成する際には複数枚の露出ブラケットされた写真を一枚のHDRに変換します。またHDRで記録した画像は最終的に8bitに落とし込む必要があります。広い領域から限られた領域に切り出すわけですから、ここが従来の写真では露出にあたるのでしょう。もちろんただ切り出すだけではなく、効果的にダイナミックレンジをマッピング・圧縮することでいままでにない表現が可能です。
この8→32→8と変換する部分をソフトウエアで行います。また24bitに変換すると表現されるときもありますが、24bitは8bitx3を意味していますので、ここで書いている8bit変換と同義です。
それでは実例をお目にかけます。(下記写真をクリックすると拡大します)
この写真はHDRを意識して撮った画像を8bit変換(つまりモニタで見られるように変換)したものです。
撮るときは2段飛びに5枚の写真からHDRにしているので、マスターファイルであるHDR画像には12EVもの範囲が記録されています。それをモニターで見られるように5EV程度に圧縮しているわけです。
そのため空のグラデーションが完全に再現されており、家の中の光まできちんと再現されているのがわかります。家の外壁の質感も完璧に出ています。

こちらは通常の一枚の写真を現像したものです。つまり12bitデータから現像しています。家を見るとわかるように少しアンダー目に撮っているにもかかわらず普通に撮れば空は飛んでしまいます。また壁面は黒くつぶれてしまいがちになります。
現在最高クラスのダイナミックレンジを持つ1DsMkIIでもHDRと比較するとこうなってしまいます。

これらはフィルムでは覆い焼き・焼きこみなどで行われていたものに近いと思いますし、以前のフォトショップでもテクニックとしてやっていた人もいると思います。HDRの応用でこれらをもっとスマートで効果的に行うことができるのが分かると思います。
人間の目は白飛びや黒つぶれがありません。なぜなら255:1の8bit記録を遥かに上回る10000:1ものコントラスト差を識別できるほど肉眼というデバイスは優秀だからです。そのため最終的にHDRで作成した画像はまるで肉眼で見るようにとても自然に見えるはずです。
しかし当たり前のようでいて、従来はなかなかなしえなかったことです。